日本に帰国してから早くも1年 ~そして中国はコロナ規制による地獄から新しい地獄へ

2023-08-07

僕が大連を離れたのは2022年4月13日。

早いもので1年以上が過ぎました。

帰国してからというもの、ありがたいことに神戸という新天地で楽しい毎日を送れています。

 

僕が日本に帰国した頃の中国ではまだ厳しいゼロコロナ政策が敷かれていました。

入国時の隔離のエグさは凄まじいもので、大連では長らくの間「ホテルで3週間&自宅で1週間」が求められていました。

(僕が渡航した2020年10月当時は幸いホテル2週間のみでしたが、その後程なくして厳格化した感じです)

そしていったん隔離が明けてからの管理も凄まじいものがあります。

商業施設や公共交通機関の利用には「健康コード」なる陰性証明と連動した通行手形のようなものの提示が求められていました。

 

銀行や病院等もこの限りで、とにかく陰性にあらずんば人にあらずと言わんばかり。

まかり間違って陽性にでもなろうものならただでさえ人権がない国の中でひときわ人権を制限、なんなら根こそぎ剥奪されます。

そしてSNS上には本名、性別、年齢、職場、身分証番号、電話番号、戸籍住所、現住所、直近数日の行動記録…

↑こんな感じでありとあらゆる情報が容赦なくSNS上に晒され、そしてあっという間に拡散します。

 

なお制限を受けるのは陽性者本人にとどまりません。

感染者が出ればその人の立ち寄ったエリアは全てロックダウン、そして有無を言わさず市民全員検査。

寒空の中、PCR検査の列に並ぶ光景はもはや中国各地の日常風景でした。

濃厚接触者やそのまた接触者が訪れたエリアも場合によっては封鎖。

実際、僕が帰国する前日には向かいのマンションが濃厚接触者が出たことを理由に封鎖されてしまいました。

それを見た僕の住むマンションの住民たちは来たるべき封鎖に備えて物凄い量の食糧・日用品を買い込んだのか、エントランス付近には宅配された食料が所狭しと置かれていました。

実際2022年の春に上海で数か月にわたるロックダウンが敷かれた際、食料の配給が間に合わずに餓死したような事案もあったとのことですから、こうした行動にも一定の合理性があると思えてきます。

結局僕が住むマンションは間一髪でロックダウンを免れたため無事帰国できましたが、予約したチケットで帰国できない程度なら中国にあっては可愛いものだったかもしれません。

隔離中にペットが殺処分されてしまった、ロックダウンの影響で急病・持病のあるご老人が治療を受けられず力尽きた、産気づいた妊婦さんが分娩できずに死産になった…等々

…コロナを抑え込むことの代償としてそんな悲劇が繰り返されていたと聞きます。

 

こういう現実を目の当たりにするなかで、中国を離れることへの迷いは跡形もなく消え去りました。

人権が制限されるってこんなに恐ろしいことなんだ…

僕みたいな一個人でさえこう思うんだから、中国でビジネスを展開している各国企業の経営者たちが痛感するところはこの比ではなかったことでしょう。

僕には中国の未来がはっきりと見えた気がしました。

 

無事日本に帰国し、こうして健やかに毎日を送れることのありがたみを噛みしめています。

その一方、中国に残っているかつての仲間たちを気にかけない日はありません。

僕の帰国から5か月が経った2022年9~10月にかけて、大連ではついに本格的な感染拡大が起こり、街全体でのロックダウンが行われました。

僕の職場があったエリアもその対象で、かつての同僚たちは会社への泊まり込みもしくは有給休暇(無ければ欠勤扱い)で出社見送りという対応だったそうです。

会社で寝泊まりしていた人の話によると、不潔で狭い宿泊場所、バリエーション少なく不味い食事、貧弱な手当(休みの日も会社に軟禁なのに1日190元)等かなり劣悪な条件だったそうです。

そうしたドタバタのさなか、仲良かった元同僚たちと連絡を取った際はそのうちの一人がこんなことを言っていました。

ちなみに彼女は党員かどうか定かではませんが、元々共産党をある程度信奉しているタイプの人間でした。

そんな彼女をしてこの発言ということは、共産党に対する不信感が一般民衆に広がり始めたことの証左に他なりません。

実際に家族でタイに移民した元同僚もいたそうです。

こういった個別事例に触れるにつけて、一時期中国のネット上で「移民」が検索最上位に来たのも無理からぬ話に思えます。

 

ところがこれより約2か月後、中国はこれまでの方針を翻して突如ゼロコロナ政策を中止します。

(これに先立って白紙デモをはじめとしたコロナ政策からの自由を求める一連のデモが頻発したことは記憶に新しいかと思います)

その結果、中国全土がパンデミックに陥ったことは言うまでもありません。

僕の直接の知り合いは例外なく全員感染しました。もう一度言います、例外なく全員です。

ワケのわからない強権的な政策にさんざん翻弄された挙句、突然梯子を外され人民が地獄に陥るという、一昔前にどこかで見たような光景かもしれません。

 

こんな状況を見かねた世界の企業はこぞって中国からの撤退を進めるのは当然でしょう。

僕が従事していたウィルス対策ソフトのサポート業務は日本への完全移管が決定しました。

DELLやIBM、アクセンチュア等の欧米系企業でも人員削減の流れとなり、日本人の現地採用組や外国語スタッフは大部分がリストラとなりました。

先ほど移民を考えてる彼女も少々先の話にはなりますが、リストラされることが確定しています。
(すでに会社からの正式なアナウンスを受けたとのこと)

 

中国ウォッチャーの一人、妙佛(みゃおふぉう)さんのYouTubeを観ている方なら中国の惨状をなんとなく把握されてる方もいるかと思いますが、まさにかつての僕の生活圏でそれが展開されていたのです。

そしてこの流れは今後ますます加速するでしょう。

 

日本に帰って来て本当に良かった。

今はただただそう思います。

LINEで送る
このエントリーをはてなブックマークに追加
Pocket